田中まじめ滅餓寧武露愚

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トレインスポッティングが好き

ブリングバックという友人のポッドキャストラジオでトレインスポッティングについて語ろうということで改めて見直した。生涯で一番見ている大好きな映画。DVDを所持しているので友人と宅飲みをするたびにBGM代わりによく再生していた。

 

トレインスポッティング、90年代前半の映画。スコットランドで暮らすヘロイン中毒の若者たちの日常と閉塞感を抜け出そうともがく姿が描かれている。ファッション、音楽登場人物のキャラクター、映像の作り方、セリフ、テンポ、ストーリー、オチ、全てが一体となった作品だと思う。「こういう服を着た人がこういう音楽を聞いてこういうノリでこういうコミュニケーションでこういう考え方・ライフスタイルだった」が作り込まれていて、一つ一つのセンスが魅力的で見ていて心地よかった。何回も見たけど今回あらためてトレインスポッティングについて色々と検索していて新しく分かったことがたくさんあって面白かった。

 

映画の中でレントンが履いているアディダスのエンジ色のスニーカーを見て「スウェードだからヨーロッパだしガッツレーかな、でもタンがボディーと同じ色だし形も違うよな」と思っていた。今回が良い機会だと、モデル名を突き止めてやろうとスニーカーに注目して見ていたら靴のソール部分が映ってガッツレー系では無いことが分かった。ソールは何となくサッカー用のもののようで調べたらサンバが出てきた。しかしサンバと違うことは知っていた。

 

試しに「アディダス サンバ トレスポ」で検索してみたら詳しい方はいるもんで「レントンの足元、samba super suedeなんですが欲しいな〜」みたいなことをおっしゃている方がいた。すごすぎる。「なんですが」じゃないですよ。僕が見た限りではあなたしかモデル名まで正しく言い当てている方はいませんでしたよ。

 

ちなみに「サンバスーパー」はタンの作りがちょっと違うようだった。しかしこちらもかっこいいのでいつか良い感じのものが再発されたら入手したい。2ではサンバスペツィアルを履いていたけど、こちらは現行もの。しかしやっぱりアディダスだったことが嬉しかった。永遠にアディダスを履こう。

 

スニーカーだけでなくコーディネートもめちゃくちゃカッコイイ。黒が褪せまくったスキニージーンズ、エリやソデまでボロボロにダメージした服、ゴミみたいに汚れたコンバースオールスターハイカット生成り、嘘みたいに小さなTシャツ。全くリアルタイムでは無かったけど高校生のときに初めて見て感じた「なんかわからんがカッコイイィィーーー!!」という衝撃は凄まじく、自分のファッション観の基本的な部分はレントンから大きく影響を受けている。若い頃と同じ格好はできないけどヒーローがいれば2000何年でもスタイルは古くならない。

 

レントンに対するダイアンのセリフ、「繊細で冗談が上手くて冒険好き情熱的で誠実なちょっといかれたワル」という言葉の通り、主人公レントンは不良っぽくてカッコイイ。不良は体制に対するカウンターだと思うので何となく人生や世の中に納得できないでいる人にとってレントンは自己投影しやすいのかも知れない。ダラダラと堕落してしまったけど抜け出そうと何度もチャレンジしたり失敗したり一か八かに賭けたり、とにかく何とか良くしようともがく姿は魅力的に見えた。憧れて静脈にヘロインを打ち込み続けた。もちろん嘘。映画はドラッグを否定しているわけでも礼賛しているわけでもない。ただ「こういうことだよ」という描き方が中立的でドライでクールだった。ヘロインは怖い。間違いなくやらない。

 

 音楽について。イントロ部分、Iggy pop /Lust for life(イギーポップ/ラストフォーライフ)が流れ警官に追われながら疾走する二人の男、バックグラウンドには物語のテーマとも言える「自分の人生を選べ」という急き立てられるような内容のリリック。何かが起きている感じが伝わってきて一気に物語へと引き込まれる。ちなみにBiSHのアユニ・Dはピエール瀧が捕まった朝にツイッターでラストフォーライフの画像を貼っていたけど瀧はコカインでトレインスポッティングはヘロインだ。

 

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レントン25歳がダイアナ14歳と出会う最初のディスコのシーンで流れる音楽。「ニャにゃにゃにゃーにゃ!テンプテーション」、Heaven17/Temptation(ヘブンセブンティーンズ/テンプテーション)という曲。このディスコの内装は「時計仕掛けのオレンジ」に多大なるオマージュを寄せて作られているらしい。

 

調べてみたら確かに「時計仕掛けのオレンジ」でミルクバーで座るアレックスたちの背景に映る壁紙の文字と、トミーとスパッドが話しているシーンで映る壁紙の文字が同じフォントだった。ちなみにヘブンセブンティーンズというバンド名も「時計仕掛けのオレンジ」に出てくる言葉から名付けたらしく、舞台美術と音楽をさりげなくリンクさせるオシャレさが泣ける。

 

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ヘブンセブンティーンズのテンプテーションから「てんてんテーン」とSleeper / Atomic(スリーパー/アトミック)に曲が繋がれる。この曲がまたカッコイイ。ブロンディというアーティストのカバー曲。

 

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「何かを始めなきゃ」と就職して新しい世界に飛び込んだレントンの高揚感を「ボンでけでけでけぼんでけぼん」と表現しているかのようなIce MC / Think About The Way(アイスMC /シンクアバウトザウェイ)もカッコイイ。未来は開かれた、かに見えたのだが。人生、起伏の連続。

 

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取引成功の音楽もカッコイイ。Sleeper / Startuesque(スリーパー/スターチュエスク)。ギター「ビービビ・ビービビー」というローファイ爽やかなイントロが流れるがレントンのセリフは次の展開を示すような暗いものだった。仲間と過ごした時間の中での楽しかったピーク。余談になるが今またこういう音が少し流行っているように感じる。ジュアンズやノーバシーズなど。

 

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そして、例の「ビール持てないならバーに来るな」事件が起きてしまう。居合わせた客を殴り付けたベグビーがタバコを取ってこいと言ってレントンはタバコに火を着けてベグビーに渡す、渡されたベグビーはレントンの顔にタバコの煙を吹きかけて、「てんてんてんてんX2」とアンダーワールドのボーンスリッピーが静かに流れ始めラストシーンへ。か、カッコイイ、、(曲が)。

 

 

映画の中で「何故あんなにひどいことをするベグビーと友達なんだろう?」ということがすごく疑問だった。いつの頃から友人関係かは調べても分からなかったけど、年上だったベグビーが落第してレントンたちと同級生になったという関係らしい。いわゆる昔からの腐れ縁。年上だし腐れ縁だから横暴な態度にも我慢して友達でいたけど、結局最後にカタルシスを迎えるという。幼馴染の友人という特別な関係が壊れずにいたひとときを映画の中で描いていたのだと解釈した。自戒。

 

豆知識のコーナー。シックボーイ以外みんなスコットランド出身、劇中のセリフはスコットランド訛りがすごくてアメリカ英語を習った人にはセリフがわからないらしい。トイレのシーンの茶色は全部チョコレート。原作を書いたアーヴィン・ウェルシュさんもマイキーというショボい売人役で映画に出演している。95年頃の2000ポンドは30万円くらい。16000ポンドは240万円くらい。

 

ちなみに映画の中に「トレインスポッティング」という曲が使われている。プライマルスクリームが映画のために書き下ろした曲で映画の中のどこで使われているかというと、禁薬したレントンとシックボーイが公園で寝そべって二人で喋っているというシーンだった。僕がシーンから感じられたことは、「集団でランニングする人たち、遊んでいる親子、色々な人がいる晴れた休日の公園で、はしっこからモデルガンで一般市民を狙うレントンとシックボーイ、人生で何を選んでいるかの対比、腐れ縁的な人間関係とその重要性」、飛躍させすぎかも知れないけど音楽を大切にしている映画でタイトル曲が使われているということはかなり重要なシーンなのではないかと思う。

 

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良い曲だな〜。トレインスポッティングには二つの意味があるらしい。一つ目はトレインスポッティングを直訳した「鉄道オタク」、転じて「些細なことに夢中になる人」、ここからもプライマルスクリームのトレインスポッティングが流れる公園での場面に繋がるのかなと考えてみた。


夢中になるという意味では、トレスポ2に「みんなSNSとか何かしらの中毒!」みたいなセリフがあったように、「どの中毒を選ぶか」、「何に夢中になるか」、「人生で何を選ぶか」という作品のテーマまで連想させられていく見事なタイトル。トレインスポッティングの二つ目の意味は「廃線になった駅で薬物を摂取している人たち」というスラング。2ではベグビーの父親のセリフでこちらの意味が使われているシーンが。

 

というわけで大好きな映画をベラベラとやらせてもらいました。「チューズユアライフ」ですね。そんな感じで、ほなまたです。ばーい。