田中まじめ滅餓寧武露愚

よろしくお願いします。

mother2(ネタバレあり)

正式タイトル『マザー2 ギーグの逆襲』。

 

1994年に発売されたスーパーファミコン用のゲームソフト。コンピューターRPG

コピーライターの糸井重里さんがシナリオとゲームデザインを手がけたことでも有名。

物語は3人の少年と1人の少女が宇宙人「ギーグ」の地球征服の野望を阻止するために冒険をしていくというもの。

 

糸井重里さんがどんな人か。色々なことをされているので詳しくはウィキペディア参照なのだけど本業はコピーライターだと思う。コピーライターは簡単に言うと商品のキャッチフレーズを考える人。

 

糸井重里さんについて。70年代中頃から活躍。80年代初頭にはサブカルチャー雑誌『ビックリハウス』において、読書投稿ページ「ヘンタイよいこ新聞」を担当。その「意味のない面白さ」で読者を熱狂させ、若者たちの教祖的存在となる。現在71歳。ウィキより。

 

代表的なコピーだけでも多すぎて紹介しきれないが、ジブリのキャッチコピーを考えたことが有名。トトロからゲド戦記くらいまでのキャッチコピーはほとんど糸井さんのもの。面白いのでそちらも少し紹介。

 

トトロ「このへんないきものは、まだ日本にいるのです、たぶん」

 

魔女の宅急便おちこんだりもしたけれど、私はげんきです。

 

紅の豚「カッコイイとは、こういうことさ。」

 

平成狸合戦ぽんぽこタヌキだってがんばってるんだよォ

 

もののけ姫「生きろ。」

 

いまだにナオキという友人がクチにする「くうねるあそぶ」(日産セフィーロ)も糸井重里ちなみにマザー2のキャッチコピーは「大人も子供もおねーさんも」。

 

キャッチコピーだけで収まらず、萩本欽一茨城ゴールデンゴールズというチーム名も考えたり、矢沢永吉さんの自伝小説「なりあがり」の構成、編集を手がけたり、忌野清志郎の「パパの歌」を作詞したり、沢田研二の「TOKIO」も糸井重里さんの作詞。ほぼ日刊イトイ新聞でも代表を務めている。

 

とにかく言葉の天才として時代を築いた人。最近は良くツイートが炎上している。実際に疑問に思うところもある。けどマザー2は超良い。糸井重里さんは「優しい世界」的なものを背負ってしまったので時代からカウンターを受けている気がする。しらんけど。

 

そんな糸井重里さんのスーパーキレキレ時代の集大成の一つがマザー2。キャラもマップも戦闘画面の背景もかわいいし、キャラクターのセリフも糸井重里が考えたユーモア溢れるものばかり。挙げきれないので少しだけ。

 

どせいさん」、丸みのある体に大きな鼻・太い眉毛がつき頭頂部に一本だけ伸びた毛に赤いリボンをしている特徴的なキャラクターがいる。ゲーム中、「どせいさん語」という独特な言葉で話すのだけど、台詞が特殊なかわいいフォントで表示されていて、これは糸井重里さんの娘が45歳の頃に書いた文字が基になっているらしい。

 

「ゲップー」、ギーグの手下で中盤戦のボス。ヘドロみたいな外見。インパクトが強く有名。会話時や戦闘時にかなりリアルなゲップ音を出すのだけど開発スタッフのゲップ音を用いている。

 

このゲップ音がリアルすぎるとクレーム連発。そのせいだけではないだろうけどアメリカでは発売直後のレビューも低評価、速攻でワゴンセールされたらしい。

 

ちなみにその後、64スマブラにネスが登場したことでアメリカでは再評価の熱が高まり、初回限定盤は現在スーパープレミア。

 

ミニスーファミでも海外版だけマザー2は収録されている。なぜ日本版に入らなかったか少し調べた。曰く、大勢で楽しめるようにRPGは少なくしたかった、ジャンルと収録キャラのバランス、入らなかったということで話題になって欲しい思い、全員の100点は無理、とのこと。

 

そう聞くとクロノトリガードラクエ風来のシレンロマサガも、ドカポンパロディウスも入っていない。ちなみに21作品中RPGFF6スーパーマリオRPGが入っている)

 

心に残る敵キャラの名前シリーズ、「よくないハエ」「ちょっとくさゴースト」「おあいそユーホー」「あつくもえる てき」「あれ」「あのあれ」「のろいのメーワク」「マル・デ・タコ」「ミタ・メ・タコ」「カナ・リ・タコ」「タコ・ソ・ノモノ」「サカナにんげん」「サカナにんげん・あに」「PKおとこ」「PKおとこ・かくうえ」「せきぞうのもとじめ」、など。ほんの一例。進化を強調する言葉のチョイスが好き。

 

アイテム編からもひとつ。砂漠に落ちているコンタクトレンズというアイテム(これがすでに見つけにくい)をフォーサイドのベーカリーの二階にいる男に渡すと「ぺテネラのくつした」というアイテムがもらえる。

 

そのキャラクターがぺテネラということはコンタクトレンズを渡さないと分からないのだが、このぺテネラには1964年の東京オリンピック 自転車競技・スクラッチの金メダリスト、ジョヴァンニ・ペッテネッラがモデルになっているそうで、糸井重里さんがぺテネラの走りに感動して登場することになったらしい。壮大な遊び心。遊び心というかもうほとんど狂気。

 

アイテム編その他。その砂漠を歩いていると日射病という状態異常になりそれを治す「ぬれタオル」というアイテムがあったり、道を塞いでいるコケシを消す「こけしけしマシン」があったり、回復アイテムである食べ物の効果をあげる「ケチャップ」「しお」などの味付け小物というアイテムも。独特。

 

そして音楽に対するこだわり。音楽もすごい人たちが作っている。日本語ロック黎明期、細野晴臣大瀧詠一松本隆鈴木茂、を擁した「はっぴぃえんど」という伝説的ロックバンドがいた。マザー2の音楽は、当時その「はっぴいえんど」と双璧をなしていた「はちみつぱい」というバンドや「ムーンライダース」というバンドのフロントマンだった鈴木慶一さんが制作に参加。天才。鈴木慶一さんと糸井重里さんは昔から組んで色々なCMを制作されていたらしい。

 

同じくマザー2の音楽制作に参加した田中宏和さんは、「ポケモン言えるかな」、初代ポケモンのオープニング『マサラタウンにさよならバイバイ!』などを作曲した人。天才。

 

ゲーム中の音楽がとにかく全て良い。特に好きなBGMは、クルーン戦などの戦闘BGM、クラーケン戦などのBGM、トンズラブラザーズのライブ、バス移動、フォーサイド、サマーズ、ダンジョン男のダンジョン、マニマニの悪魔が作った幻影のフォーサイドのホテルの音、それ以外も全部いい。ぜひ聞いて欲しい。

 

自分の思い出。ハッピーハッピー村のトラウマ。ハッピーハッピー村ではハッピーハッピー教という新興宗教が流行っていて街全体が青く塗られていたり、村の中央部にある教団本部に入ってみるとビッシリと青い頭巾をかぶった信者で埋め尽くされていたりしてとても不気味だった。

 

オウムの事件がちょうどあった頃、幼心に「しんこうしゅうきょう」というものに恐怖心を抱いていて現実と交錯するような強烈なインパクトがあった。

 

信者は三角の青い頭巾をかぶっておでこの部分にハッピーハッピーを表すHHというアルファベットが書かれていた。しかし海外ではHHは消され三角頭巾の先にポンポンがつけられている。これは何故かというとアメリカの白人至上主義的秘密結社KKK団を思い起こさせてしまうということで海外版にはデザインに若干の変更を施したそうだ。

 

ちなみにハッピーハッピー村の次に行く街の名前はスリーク、綴りは3を英語にしたスリーthreeKでスリーク、3K、こ、これは。ちなみにこれも海外版だと変更されスリードになっているらしい。

 

以下強ネタバレ。

 

 

 

 

他にもダンジョンが好きすぎてダンジョンになってしまった男の体に入ってそこがダンジョンマップになっていたり(そこにも電話があってセーブできたりベンチで休んで体力が回復できたりする)、地下世界に行ったらマップの中の主人公たちがめちゃくちゃ小さく描かれてめちゃくちゃ大きな恐竜型の敵がいたり、マジカントという主人公の精神世界に行くマップではマップ自体がサイケデリックなのに村人に話かけるごとに画面の色合いが変わったり、場面も次から次へと展開して飽きない。フォーサイドの裏面もかっこいい!

 

盛り込まれすぎてマザー2を語る時、みんな微妙に思い出が違う、引っかかったところが異なる。移動中も村人への聞き込み中も戦闘中も全て楽しい。音楽、グラフィック、言葉のチョイス、全編にユーモアがあり、どこを切り取っても楽しいというスキが無さすぎるゲーム。

 

ゲームの中で名場面を写真に撮りにくる人がいたり、ピザを宅配できたり、2時間連続でゲームしているとパパから電話がかかってきて休むように促されたりするなど仕掛けも盛り沢山。

 

ちなみにパパからの電話に「まだ冒険を続ける」と言うと「たしかに今は世界を救う冒険の途中だしな」みたいなことを言う。面白い。

 

後世への影響。Killer bongがサントラをサンプリングしたり(これはワンだけど)、星野源サケロック時代にマザー2のタイトルロゴをTシャツのネタに使ったり、最近だとBiSHが主人公たちのドット絵をサンプリングしたりと今に至るまで擦られ続けているネタ。

 

ここからさらに超ネタバレ。ここで読み終わっても問題ないです。全クリしたらまたぜひ。以下。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ラスボス。ラスボスは悪そのものになったギーグ。ラスボスとの戦闘は不気味な背景のみでギーグの姿はない。悪そのものなってしまったから。そしてギーグは通常の攻撃では倒せない。

 

倒すためにはポーラのいのるというコマンドを9回する必要がある。ポーラと出会ったときから戦闘画面中にいのるコマンドがあるけど、基本的には使わないコマンド。

 

当時もプレイしていない僕の耳にも噂だけが流れてきた。「ラスボスはポーラの『いのる』しないと倒せないよ」と。インターネットのない時代。ムリゲーすぎて噂がバズってた。※マジカントのネスの悪魔も自分で工夫しないと倒せない。

 

そして、ポーラの祈りに呼応するように旅で出会ったキャラクターたちが主人公たちの無事を祈ってくれて、その人を思う心でギーグと戦っていく。一人だけの力でここまできたのではないこと、色々な人との出会いがあって進んできたこと、その人たちの中にいる自分、そういったものが思い返される。

 

物語の中盤で主人公ではなくプレイヤーの名前を入力するのだけど、最後のいのる演出ではプレイヤー自身がゲームの中で祈ることによりギーグを撃破する。強く思うことが大事というメッセージを感じた。ギーグ撃破後、ポーキーは生き残りトゥービーコンテニュー。ポーキーは人を利用して生きてきた人間、自己中心的な人間の象徴。この辺も考えさせられるものがある。

 

以上、どこを切り取っても面白いスーファミソフト。ここまで刺激を受けたゲームはなかった。機会があったらぜひ触れてみてください。では。