【映画】オトナ帝国【ネタバレ】
野原ひろしは35歳らしい。まもなく私も35歳の誕生日を迎える。ちなみに連ちゃんパパは34歳。
クレヨンしんちゃんの映画・オトナ帝国という作品では大人について色々と考えさせられた。
劇中のクライマックス、自殺を図ったオトナ帝国のリーダーに対して、しんのすけが「ズルいぞ!」という言葉を投げかけるシーンがとても印象的だった。
「死ぬな!」でも「生きろ!」でもなく「ズルいぞ!」。
死のうとしている人に対して使う言葉としてはあまりしっくりこないのだけど、その場面にはなぜかしっくりきていた。
「ズルい」とはどういう状態を指す日本語か。自分では、そのシーンに即する意味が思いつかず嫁に聞いてみたところ、「順番を守らないことでは?」という答えが返ってきた。
たしかに。
そう考えると、「ズルいぞ!」こそが、オトナ帝国のテーマなのではないだろうかと思い至った。
子供から大人になる。世界には等しく時が流れ、動物は生まれたら老いてやがて死ぬ。
親より先に死ぬな、自ら死を選ぶな、自分が老いたら次の世代にバトンを繋げ、順番を守れ、順番を守らないなんて「ズルいぞ!」と。
映画では、思い出に浸る装置により現実逃避を繰り返したオトナたちが、社会での責任を放棄するという恐ろしい世界が描かれていた。
ただ、その現実逃避も現実でがんばっているからこそ必要になるのだけど、あくまでも現実が最優先。その順番が狂ってしまうと究極的には社会が崩壊してしまう。ここにもまた「順番」についてのメッセージが込められているのかも知れない。
物語は、野原ひろしが自身の靴下の強烈な匂いで現実を思い出す。臭い靴下が働くことの象徴のように描かれていて面白かった。
働いて疲労したりストレスを感じることによりアポクリン腺が開き汁が出て人間は臭くなる。がんばって働いた後のワキや足は臭くなるように人間の体は作られている。
野原ひろし、35歳。自分には子供はいないが、自然の流れ、人類の営みの中で、自分よりも若い世代に対して大人の責任が果たせるようにがんばりたいとクレヨンしんちゃんに突きつけられた。がんばる。