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【映画】リトルミスサンシャイン【ネタバレ】

リトルミスサンシャイン


ミスアメリカに憧れる7歳の女の子オリーブ、自己啓発系の情報商材を売るお父さんリチャード、パイロットを目指して願掛けのために9か月間言葉を発していないお兄ちゃんドウェーン、鼻からヘロインを吸引してセクハラしまくるおじいちゃん、タバコを吸っていないと嘘をつくお母さんシェリル、鬱病で自殺未遂した全米一のプルースト学者でシェリルのお兄さんフランク。クセの強い登場人物たち。


オリーブが子供の美人コンテストに繰り上げ当選で出場することになったところから物語は始まる。会場はカリフォルニア。800マイルもの距離を3日間かけて全員で一緒に旅をすることになった。


大変なメンバーなので道中も色々と大変なことが起こる。車は故障するし、フランクは自殺未遂の原因となった恋人に遭遇するし、リチャードの本は出版できなくなるし、それをきっかけにリチャードとシェリルは離婚寸前の喧嘩をしたり、おじいちゃんが死んだり。


見ていて、みんなで目的地を目指すことの難しさ、考え方や価値観は違うけど、みんなで行かなくては行けないということを思った。比喩的。


襲ってくる様々な不幸を何とかみんなで乗り越えて、オリーブを大会に出場させるべく一行は旅を続ける。


目的地間近になってドウェーンの色弱が発覚、色が区別できないドウェーンはパイロットになれないことが分かってしまう。我を失って溜まっていた家族への不満を叫ぶシーンは引き込まれた。


「離婚、破産、自殺、みんな負け犬じゃないか!」


自己啓発系こリチャードが劇中で何度も繰り返す「この世には勝ち馬と負け犬しかいない、勝ち馬になれ」という言葉にこの物語のテーマが含まれている。


ドウェーンの言葉に自己の矛盾を突きつけられてリチャードは「勝ち馬と負け犬」の考え方を捨てられたのだと思う。


人生は勝ち負けじゃないし、他人と比較するものじゃない。誰のために何のためにするか。どう生きるか。


パイロットになれないことが分かり取り乱していたドウェーンだが、オリーブのためを

思って旅を続けるように思い直す。


色々な法律を犯したりルールを破ったりしながらも何とか会場に到着。このあたりも比喩的。


すったもんだの受付を済ませ一息つく一行。会場の雰囲気に居心地の悪さを感じたドウェーンはフランクを誘って外へ。


「ミスコンは糞だな。人生と一緒だ。空軍アカデミーも。飛びたきゃ飛べばいいんだ」


良いこと言う。後半は畳かけるようなパンチラインの応酬。


子供美人コンテストは、バキバキに鍛えられた子供たちの品評会のようだった。オリーブは一人だけ子どもらしく素材そのものといった様子。


「レベルが違う!」「負けにいくようなもんだ!」「やめさせろ!」「妹が採点されるのは我慢できない!」、オリーブを傷つかせたくなかったリチャードとドウェーンは最後の特技審査にオリーブを出場させないようにシェリルを説得。


しかし、シェリルはコンテストに向けて努力していたオリーブの気持ちを汲んで出場させることに。オリーブは、練習を見てくれたおじいちゃんのためにがんばると言ってステージへ向かう。


音楽がかかりオリーブのダンスが始まると、それまでとは明らかに異質なステージング(ウィキペディアの言葉を借りるとバーレスク風のダンス)に「下品だわ!」とステージに罵声を浴びせ席を立って帰る人も。


主催者もダンスをやめさせるようにリチャードに怒って詰め寄る。


ステージに上がったリチャード、一生懸命におじいちゃんのために踊るオリーブ、制止するかと思いきやオリーブに合わせて珍妙な踊りを踊り始めるリチャード。リチャードが体裁よりオリーブの意思を尊重して守ったというシーンだと感じた。


更にフランク、ドウェーン、シェリルと続き、みんなで下手くそな踊りを踊った。


みんなで踊る姿は楽しそうだった。


人の目を気にしない世界、やりたいことをやる、やるべきことをやるだけのシンプルな世界に行ったような、ある種の悟りを開いたような、それを表現したシーンだと感じた。


コンテスト会場という勝ち負けや強者弱者の関係が凝縮されたような場所で、勝ち負けの考え方をしていた人の価値観が「勝ち負けじゃない!体裁じゃない!」と変わったシーン。鮮やかな反転、カタルシス、カウンターだと思う。


クオリティも大事、評価されることも大事だけど極端じゃなくて良い。体裁を気にしないことにより、物事がちょっとずつ単純化されて、やりたいことができるようになる気がした。


呆気に取られる主催者と一部の観客、でも笑顔で受け入れている人たちもいた。


誰の問題も解決していない。しかしもっと大事なものが見つかり、それぞれが前向きに生きられるように考え方が変わった。


実を言うと、この映画が昔は受け入れ難かった。「いや問題解決してないのにそんなハッピーエンドみたいになる?無理やりじゃない!?」という感じだった。(スクールオブロックも。また見てみよう)今回見て、そんなことはなかった。めちゃくちゃハッピーエンドだった。


人と比べるばかりの価値観の中で全てを見ていたので受け入れ難かったのだと最近気が付いた。昔の話。ドラマanoneのラストシーンにも繋がるシーンもそうだと思う。


ホーホケキョ隣の山田くんも、ふと「あの映画面白かったかも」と思って見てみたら自分の感じ方が変わっていてめちゃくちゃ面白かった。しかも、ブログを書くにあたってリトルミスサンシャインのウィキペディアを見ていたら監督は「隣の山田くん」をかなり意識して作ったことが分かった。


リトルミスサンシャインはボロボロのバスをみんなで押して帰っていき終演。人と比べても、人の目を気にしても仕方がない。生きたいように生きよう。仲間はきっといる。作品からそのようなメッセージを受け取った。良い映画でした。以上。まる。